ISO 9001の改訂:新たな要求事項と見直しポイント
ISO 9001の改訂:新たな要求事項と見直しポイント
現時点では、ISO 9001の根本的な構造変更は予定されていません。今回の改訂では、他のマネジメントシステム規格との構造的な整合性の強化が中心課題となる一方で、附属書に記載された特定の要求事項の明確化も重要なテーマとなっています。
取り上げられる主なトピックには、以下のようなものがあります:
- 倫理および誠実性
- ビジョン、ミッション、価値観
- 品質文化
- 品質マネジメントにおけるリスクと機会の管理
これにあわせて、品質マネジメントの用語と原則を定義するISO 9000も改訂され、新たな定義や概念が追加される予定です。
こうした内容からも、今回のスケジュール変更は単なる遅延ではなく、より質の高い、将来を見据えた改訂版を開発するための綿密なプロセスであることがうかがえます。
改訂までの経緯:これまでのマイルストーン
改訂のプロセスは、2023年8月にISO/TC 176 SC2のメンバーによる単純多数決によって正式にスタートしました。なお、2020年の同様の投票では早期改訂案が否決されていた経緯があります。
- 今回の改訂が承認された背景には、次のような要因があります:
- 世界経済および地政学的環境の不確実性
- 新技術(例:デジタル化、AIなど)の進展
- ビジネス環境全体の急激な変化
これらを受けて、ISO/TC 176は品質マネジメントシステムの現代的な適用方法の見直しが不可欠であると判断しました。
新たなテーマ:改訂で取り上げられる主な課題
2023年12月にロンドンで開催された会議では、改訂の目的とスコープが改めて確認され、改訂プロジェクトの“設計仕様書”が承認されました。
ドイツ品質協会(DGQ)の標準化責任者であり、DINおよびISOで中心的役割を担うトーマス・ヴォッツマイヤー氏は、次のように述べています:
「この会議では、“新たなテーマ”と呼ばれる、改訂において重要な論点が多く議論されました。たとえば、ESGを含むグローバルな潮流の影響、品質マネジメントの運用上の変化、新技術の導入などが挙げられます。」
さらに、会議ではこれまでに寄せられた品質マネジメントに関する解釈要請のレビューも行われ、「リスク」と「機会」の定義の違い、文書化の要求事項の整理、QMシステムと組織全体のマネジメントとの統合的な理解などについて、初期的な議論が交わされました。
ISO 9000の改訂も並行して進行中
ISO 9001に加えて、品質マネジメントの原則や用語を定義するISO 9000も、同時に改訂作業が進められています。
具体的には:
- 品質マネジメント7原則の見直し
- 新しい定義または修正された用語の導入
- 品質マネジメントにおけるリスクアセスメントの強化
これらの変更は、ISO 9001との整合性を保つ形で連携して反映される予定です。
また、マネジメントシステム監査の国際ガイドラインであるISO 19011の改訂も計画されていますが、こちらについては現時点で具体的なスケジュールは未定です。