CAPAとは何か?
是正処置および予防処置プロセスは、品質マネジメントシステム(QMS)の中心的な構成要素であり、ISO 13485、MDSAP、規則MDR(EU)2017/745、および米国FDAの必須要件です。
CAPAの基本とよくある誤り:医療機器業界で信頼性とコンプライアンスを確保するために
是正措置(Corrective Action)とは、すでに発生した不適合や欠陥の根本原因に対処し、再発を防止するためのプロセスです。これには、不適合の是正と再発防止に向けた原因分析と対策が含まれます(ISO 9001:2015より)。
一方、予防処置(Preventive Action)は、将来的に発生する可能性のある不適合を未然に防ぐために、リスクを予測し、先回りで対策を講じる取り組みです。これは、品質マネジメントシステム全体の改善にもつながります(同上)。
CAPA(Corrective and Preventive Actions)は、単なる記録作業ではありません。品質課題を根本から解決し、将来的な問題を防ぐための組織的アプローチであり、コンプライアンス確保と継続的な改善に直結します。
しかし、DQSが多数の医療機器メーカーを審査してきた中で、CAPAに関して共通する誤りがいくつか見受けられました。以下は、特に注意すべき3つのポイントです。
誤り①:すべての問題にCAPAを適用し、リソースを浪費してしまう
CAPAは、組織にとって重大性の高い不適合や傾向的な課題に対して適用すべきものです。
例えば、軽微な誤記や一時的な外観不良といったインシデントにまでCAPAを適用してしまうと、本来注力すべき重大な問題に対するリソースが削がれる結果となりかねません。
逆に、深刻な不適合に対して表面的な対応しか取られていないケースも見られます。例えば、製品テストで部品の欠陥が判明したにも関わらず、部品交換のみで済ませてしまい、根本原因(例:調達プロセスの問題など)に踏み込まない対応は、“是正”とは認められず、監査で不適合指摘につながる可能性があります。
対策:
- CAPAを開始する前に、その問題が体系的なものであるか、単発的なインシデントかを見極める
- 軽微な問題は「修正処置」として直接対応し、CAPAと明確に区別するルールを手順書に明記する
誤り②:再教育のみを是正処置とする
ヒューマンエラーが発生した際、再教育を行うことは一見妥当な対応に思えますが、トレーニングのみで根本的な解決を図ろうとするのは不十分です。
審査や規制当局の視点では、「再教育だけで問題が解決するのか」という点が重視されます。
再教育後も同様の不適合が繰り返される場合、真の根本原因はプロセス側にあると判断され、CAPAの効果不十分と見なされる可能性があります。
対策:
- 再教育はあくまで補助的アクションと位置づけ、プロセス設計や仕組みに踏み込んだ改善を主軸とする
- エラーを防ぐ仕組み(例:チェック機構の導入、手順の見直し、自動化の活用など)を検討する
誤り③:是正処置と予防処置の違いを曖昧にしている
是正処置と予防処置を混同することは、第三者認証審査でもっともよく見られる不適合のひとつです。
- 是正処置:すでに発生した不適合への対応と再発防止
- 予防処置:未然に問題を防ぐためのリスク予測と事前対策
すでに問題が発生している場合、その対応は予防処置ではなく是正処置でなければなりません。
この区別があいまいな記録や報告は、審査での指摘につながる可能性があります。
予防処置の実例:
- 市場の変化を見越して、サプライヤー管理プロセスを強化
- 傾向分析から品質データに懸念が見られた場合、機器のメンテナンス頻度を見直す
結論
CAPAプロセスは、適切に設計・運用されることで、企業の業績向上、品質の安定、ならびにコンプライアンス強化に大きく寄与します。一方で、目的や適用範囲が不明確なまま導入・運用されると、過度な事務負担やリソースの浪費を招き、かえって不適合の温床となる可能性も否定できません。
そのため、CAPAを開始するにあたっては、「何を解決すべき課題として捉えているのか」「そのCAPAは真に根本原因への是正・予防につながっているのか」を事前に十分検討することが重要です。単なる形式的対応や管理項目の追加にとどまらず、実効性のある問題解決に焦点を当てることで、CAPAは継続的改善を推進し、オペレーショナル・エクセレンスを実現するための有効な手段となります。