PSURの目的とは?
PSURの主な目的は2つあります:
a.ベネフィット・リスク・プロファイルの変化の特定と評価
PSURの主な目的は、医療機器または機器群に関連する市販後調査(PMS)データの分析結果および結論を要約して提供することです。PMSはMDR(医療機器規則)の要件に基づき、製造業者によって計画、実施、レビューされます。この際、リスクに基づいたアプローチが採用され、PMSの頻度や詳細度が定義されます。
この分析により、機器のベネフィット・リスク・プロファイルにおける変化を特定することが可能になります。特に新しい機器においては、実際の使用状況を反映したデータを収集し、安全性や性能に関する新たな情報や傾向を明らかにすることが重要です。製造業者はPMSデータを積極的に収集し、安全性や性能に関する懸念事項を特定して評価する義務があります。ベネフィット・リスク・プロファイルに不利な変化が見られた場合、製造業者はこの情報を臨床評価やリスク管理プロセスと照らし合わせて評価しなければなりません。
さらに、PSURはこれらの重要な情報をノーティファイドボディや所轄官庁に提供することで、透明性を確保します。
b.是正措置または予防措置(CAPA)に関する情報
PSURは、MDR第83条第4項で義務付けられているように、機器に関連する是正措置または予防措置(CAPA)を報告するためのツールとしても機能します。PSURにおけるCAPAには以下のような措置が含まれます:
- PMS活動を通じて特定された安全性の問題や性能上の懸念に対応するもの。
- 製品の安全性、性能、または品質に直接影響を及ぼすもの。
CAPAの詳細をPSURに記載することで、機器に関連するすべてのリスクに迅速に対応し、関連当局に適切に情報を伝達することが可能になります。
PSURの必須内容とは?
PSURは明確で整理された独立した文書であるべきです
PSUR(定期安全性最新報告書)は、市販後調査(PMS)のすべての活動と収集されたデータを包括的に要約するものでなければなりません。以下は、PSURに含めるべき内容の内訳です。
一般的な側面
- 概要
PSURは、PMS計画の詳細と重複することなく、すべてのPMS活動および収集されたデータの概要を提供する必要があります。目的は、結果、結論、取られた措置を簡潔に要約し提示することです。 - わかりやすさと構成
報告書は読みやすく、情報が明確かつわかりやすくまとめられている必要があります。特に、ベネフィット、リスク、そしてベネフィット・リスクプロファイルの変化に関する重要な情報を強調したエグゼクティブサマリーの作成を推奨します。 - 一貫性
製造販売業者は、医療機器のクラスに関わらず、PSURの書式や情報提示方法を一貫したものにするよう努めるべきです。
具体的な側面
MDR第86条第1項に基づき、PSURには以下の内容を記載することが求められます:
- ベネフィット・リスクの結論
PMSデータの分析結果に基づくベネフィット・リスク判定の概要。 - 市販後臨床フォローアップ(PMCF)の所見
市販後に継続して収集された臨床データから得られた主な所見。 - 販売および使用データ
製品の販売量、使用者の集団規模や特徴、可能であれば使用頻度に関する情報。
製造業者はPSURを作成する際に何を考慮すべきか?
製造業者がPSUR(定期安全性最新報告書)を作成する際には、以下の点を考慮する必要があります:
- 重大なインシデント、軽微なインシデント、予期しない副作用、および現場での安全是正措置に関するデータ。
- トレンドレポート、技術文献、関連するデータベースや登録簿からの情報。
- ユーザー、販売業者、輸入業者からのフィードバックや苦情、さらに類似機器に関する公開情報。
結論
PSUR(定期安全性最新報告書)は、医療機器の上市後における継続的なモニタリングと評価を確実に行うための重要な文書です。市販後のデータを体系的に分析し、新たなリスクに対応することで、製造業者は医療機器のライフサイクル全体を通じて安全性と有効性を維持できます。PSURの適切な作成と更新は、規制上の義務であると同時に、責任ある機器管理の不可欠な要素でもあります。
PSURのレイアウトと内容の構成は非常に重要です。DQSは800ページ以上に及ぶPSURを確認した経験があります。ノーティファイドボディ(Notified Body)はこれらの内容を審査する必要があり、審査費用が製造業者に請求される場合もあります。そのため、PSURを簡潔かつ要点を押さえたものにすることは、明確なコミュニケーションを実現し、コストを最小限に抑えるために欠かせません。
免責事項:本ブログは情報提供を目的としたものであり、MDRやMDCG出版物などの公式ガイダンスを解釈または代替するものではありません。本内容およびその解釈の正確性を保証するものではないため、読者の皆様には必ず原文をご確認いただくことをお勧めします。
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クレア ダイソン
合理的薬物設計の博士号を持ち、医薬品や生物学的反応と相互作用する医療機器において10年以上の経験を持つ。キャリアの大半を主にスイスの企業で過ごす。2018年に認証機関に転職し、新しい認定や指定を含むいくつかの変革プロジェクトに携わる。
